第11回 なぜ運用担当者は金利を見るのか

金利

金利はすべての運用判断の出発点

*運用担当者が出勤して最初に確認する数字は何でしょうか。株価でしょうか。為替でしょうか。実は、多くの運用担当者が最初に見るのは「金利」です。

運用担当者に必要なのは、相場が上がるか下がるかを当てる能力ではありません。

経済や金融政策、市場の動きをつなぎ合わせ、「今、市場で何が起きているのか」「次に何が起こり得るのか」を自分なりに考える力です。

本記事では、この力を「相場観」と呼ぶことにします。そして、相場観を醸成する出発点となるのが「金利」です。

信用金庫の職員は、金利については預金と融資に関係づけて知っています。

したがって、新しく運用担当になった職員は、預金・融資の感覚を土台にして、有価証券の世界へ入っていくと理解しやすいと思います。

そこでは、「金利=預貸の条件」から、「金利=あらゆる資産価格の基準」へ視点を広げることが必要となります。金利は、有価証券運用における「基準価格」なのです。

預金・融資で知っている「金利」

金融機関の職員の多くは、金利を「預金の利息」や「融資の条件」として見ていると思います。

資金運用担当者の視点に立つと、金利はそれだけではありません。金利は、有価証券運用の出発点になります。

なぜかというと、金利は簡単に言えばお金の値段だからです。

例えば、スーパーでは野菜に値段があります。同じように、お金にも値段があります。その値段が金利です。

預金と融資を、お客様の立場から見ると、

預金では、お金を預けることで利息を受け取ります                       融資では、お金を借りることで利息を支払います

つまり、金利は「お金を使うことのコスト」であり、「お金を持つことの報酬」でもあります。この考え方は、有価証券でも同じです。

有価証券では、金利は「将来のお金を今いくらで見るか」の基準となるのです。

債券は「融資の仲間」

債券は、国や企業などにお金を貸す商品です。したがって、債券の利回りは貸出金利に近いものとなります。

債券を見るときは、まず金利を見ます。

市場金利が上がると、すでに持っている債券の利回りは相対的に低くなり、魅力が下がるので、価格は下がります。

逆に市場金利が下がると、既存の債券の利回りは相対的に有利になるので、価格は上がります。

このように、市場における債券の金利が基準となって、既に持っている債券の値段が決まることになります。金利は債券価格を動かす中心変数だといえます。

たとえば、新発債の利回りが3%で、いま保有している債券の利回りが2%なら、2%の債券は相対的に見劣りするので、価格は下がります。

金利の変動によって価格が変動するところが、預金との大きな違いです。

株式にも金利が効く

株式でも金利は重要です。

株式は「企業の利益を買う」ものですが、実際の評価では、企業の将来の利益を期待して買われます。

将来受け取れる利益を、今の価値に換算するときに、金利を使います。

金利が上がると将来利益の価値が相対的に下がり、株式には逆風になります。           金利が下がると将来利益の価値が相対的に上がり、 株価には追い風になります。

金利は株式の価格決定にも使われる物差しなのです。

金利を見るときの3つの視点

資金運用では、まず金利を見ることが出発点になります。金利を見ずに有価証券を評価することはできないからです。

そして、見るのは「金利は高いのか、低いのか」だけではありません。

①いま金利は上がっているのか、下がっているのか、という方向性                ②短期金利なのか、長期金利なのか、という金利の年限                     ③市場の予想より高いのか、低いのか、という予想との比較

この3つをセットで見ることが大切です。

特に、金利を市場の予想と比べることは重要になります。

例えば、市場が「政策金利は据え置き」と考えていたところで利上げが行われると、市場はその予想を修正するため価格が大きく動くことがあります。

単に「金利が高いか低いか」ではなく、変化と市場予想との差を見るのが運用の起点となります。

実際の金利が市場予想を上回れば有価証券の価格は下落しやすく、予想を下回れば価格には追い風となりやすいといえます。

まとめ

預金と融資では金利は取引条件ですが、有価証券運用では金利は価格を決める基準になります。

資金運用担当者にとって金利は、最初に見る数字ではなく、最初に考える軸になるものです。

例えるなら、金利は「座標の原点」です。預金・融資では条件の起点ですが、有価証券では価格決定の起点となり、すべての判断はここから始まります。

では、この金利はどうやって決まるのでしょうか。

金利は市場で自然に決まっているわけではありません。そこには景気や物価、日本銀行の金融政策など、さまざまな要因が関わっています。

次回は、その仕組みを実務の視点から考えていきます。

📌 30秒で振り返り

・運用担当者に必要なのは、「今、市場で何が起きているのか」「次に何が起こり得るのか」を自分なりに考える力であり、その出発点になるのが「金利」。

・信用金庫の新人運用担当者は、「金利=預貸の条件」から、「金利=あらゆる資産価格の基準」へ視点を広げることが必要。

・すべての運用判断は「金利」から始まる。

💡 筆者メモ

貸出金利は、資金調達コストや他の金融機関との競争を念頭に、借主の信用力や取引状況、これまでの関係性などを加味して決められます。

一方、有価証券の売買価格は、市場で形成されます。市場は、自分たちの事情を考慮して価格を決めてくれるわけではありません。

特に債券は、金利そのものに近い商品であり、市場金利の動きが価格に直接反映されます。運用担当者の気持ちも、金利とともに上がったり下がったりします。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供および教育を目的として作成したものであり、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。詳細は免責事項をご覧ください。

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