市場参加者の見方を映す金利
*長期金利の代表的な指標は、新たに発行される10年国債の利回りです。国債だけでなく、社債や貸出など、さまざまな金利を考える際の基準になります。
今回は、長期金利です。長期金利とは、一般に「期間が1年を超える資金取引に付く金利」をいいます。
その代表が、新発10年国債の利回りです。ニュースで「長期金利が上昇した」と報じられる場合、多くはこの利回りを指しています。
前回見た短期金利は、日銀が目標を決め、その水準へ誘導する金利でした。
これに対して長期金利は、金融政策の影響を受けながらも、将来の金利や物価に対する市場参加者の見方を反映して決まります。
長期金利はどのように決まるのか
具体的には、国債など長期の債券が市場で売買されることで、その利回りは決まります。
国債を買いたい投資家が増えると、国債価格は上がり、利回りは下がります。逆に、売りたい投資家が増えると、国債価格は下がり、利回りは上がります。債券価格と利回りは、反対方向に動くからです。
(*金利が上がると債券価格が下がることについては、 「第17回 金利が上がるとなぜ債券価格は下がるのか」で詳しく説明しています。)
たとえば、新規に発行される国債は、財務省が発行条件としての金利を決めているように見えます。しかし、財務省が勝手に決めるものではなく、入札日時点の市場で売買されている期間がほぼ同じ国債の利回り(=市場で決まる利回り)に合わせて決まります。
では、投資家は何を見て売買を判断するのでしょうか。主な材料は、次の三つです。
1 将来の短期金利(政策金利)の見通し
日銀が今後、利上げを進めるのか、それとも利下げに向かうのかという見方です。
将来の短期金利が高くなると予想されれば、長期金利にも上昇圧力がかかります。
2 将来の物価の見通し
物価上昇が続くと予想されれば、同じ利息を受け取っても、そのお金で買えるモノやサービスは少なくなります。そのため投資家は、より高い利回りを求めるようになります。
物価上昇を抑えるために日銀が利上げするとの見方も、長期金利を押し上げる要因になります。
3 国債の需給
国債の発行が増える一方で、買い手が十分に増えなければ、国債価格は下がりやすく、利回りは上がりやすくなります。
反対に、国債を買いたい投資家が多ければ、利回りは下がりやすくなります。
市場参加者は、こうした材料をそれぞれ判断し、国債を売買します。その結果として生まれた価格が、長期金利となって表れます。
ただし、「市場で決まる」といっても、日銀と無関係ではありません。政策金利の見通しに加え、日銀による国債の買入れも国債の需給を通じて長期金利に影響します。
長期金利には、短期金利より市場の見方が強く表れる、と捉えるのが適切です。
信用金庫の実務のどこに出てくるか
長期金利の変化は、信用金庫の実務では主に三つの場面に表れます。
1 新たに購入する債券の利回りと、保有債券の時価
国債や社債を新たに買うときの利回りは、長期金利の水準に大きく影響されます。
例えば、10年国債の利回りが1.6%から2.0%に上がったとします。このとき、新たに買う10年国債は、以前より高い利回りで運用できます。一方、すでに保有している利回り1.6%の国債は魅力が相対的に低下し、市場価格が下がります。
したがって、金利上昇は「これから買う債券」には好材料ですが、「すでに持っている債券」の時価には下押し要因です。
会計上の損益への表れ方は保有区分などによって異なりますが、運用担当者は金利の変動による保有債券の含み損益や自己資本への影響を常に確認する必要があります。
2 投資する債券の年限管理
長期金利が上がると、一般に残存期間の長い債券ほど価格は大きく下がります。長い年限の債券に投資するほど、金利変動の影響を強く受けるということです。
そこで、特定の年限に投資が偏っていないか、満期が適度に分散しているかを確認します。
単に長い債券を避けるのではなく、収益確保と価格変動リスクのバランスを取りながら、保有年限を管理することが大切です。
3 長期固定金利の貸出
住宅ローンや長期の設備資金など、固定金利の貸出条件を決める際にも、長期金利は重要な基準の一つになります。
長期金利が上昇しているのに、長期固定金利の貸出金利を低いまま据え置けば、調達・運用環境との間にずれが生じ、将来の利ざやが圧迫されるおそれがあります。信用コストや事務コストなどとともに、金利変動リスクを織り込む必要があります。
このように、長期金利は、運用面では新規投資の利回りと保有債券の時価に、融資面では長期固定金利の設定に影響します。
長期金利は、信用金庫の収益とリスクの双方に関わる重要な金利なのです。

持ってほしいイメージ
長期金利は、市場参加者が「これからの短期金利や物価」を予想し、国債を売買した結果として表れる金利です。
信用金庫にとっては、債券運用と長期固定貸出の両方を考える際の基準になります。
例えば、ニュースで「日銀は政策金利を据え置いたが、10年国債利回りは上昇した」と聞いたとします。これは、現在の政策金利が変わらなくても、市場が将来の利上げや物価上昇、国債需給の変化を織り込み始めた可能性を示しています。
運用担当者は、長期金利の水準だけで売買を決めるのではなく、なぜ動いたのかを考えます。そのうえで、保有債券の年限構成、含み損益、今後の投資余力を一体で確認することが大切です。
金利上昇は、保有債券の時価には逆風ですが、新たな投資利回りには追い風です。上がった、下がっただけで良し悪しを決めず、保有資産と今後の投資の両面から見ることが大切です。
次回は、短期金利と長期金利がどのようにつながっているのかを、「長期金利は将来の短期金利の平均」という考え方から、信用金庫の実務に結びつけて説明します。
📌 30秒で振り返り
・長期金利は、一般に期間が1年を超える資金取引に付く金利であり、代表的な指標は新発10年国債の利回りである。
・長期金利は、将来の短期金利、物価、国債需給への見方を反映して市場で決まる。また、日銀は、政策金利の見通しや国債買入れを通じて長期金利にも影響を及ぼす。
・信用金庫において長期金利は、債券の投資利回り・時価・年限管理と、長期固定貸出の条件設定に関わっている。
💡 筆者メモ
債券の利回りは、誰かがコントロールしているのではなく、市場参加者の自由な意思による売買で決まります。したがって、長期金利は、その時々の景気や経済状況を忠実に反映しているといえます。
しかし、日銀はマイナス金利導入時に、日銀当座預金にマイナス金利を付け、さらに資金供給を拡大するために市場から長期国債を大量に購入しました。これによって、金融政策が長期国債市場にまで波及しました。
最近、日銀総裁は、「長期金利は金融市場において形成されることが基本」と発言しています。そこには、長期金利の有用性とその特性を守ろうとする意思が感じられます。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供および教育を目的として作成したものであり、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。詳細は免責事項をご覧ください。
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