第21回 金利と株価はどうつながっているのか

金利

金利は株価変動の重要な要因

金利は景気や実体経済に影響するとともに、株式や他の資産にも影響を与えます。逆に景気や株価が金利に影響することもあります。今回は、金利と株価のつながりを一つの流れとして捉えながら説明します。

「金利が上がると株価は下がり、金利が下がると株価は上がる」。市場ではよく、このように説明されます。実際、金利は株価を動かす重要な要因です。

けれども、新聞やニュースを見ていると、金利が上がっているのに株価も上がることがあります。反対に、中央銀行が利下げしたのに株価が下がることもあります。

一見すると矛盾しているようですが、金利と株価の間には、景気や企業業績を介した一つの流れがあります。その流れをたどれば、金利と株価が基本的には反対方向に動きやすい理由と、時には同じ方向に動く理由を無理なく理解できます。

まずは、金利と株価の関係を、基本となる「景気と企業業績」と「債券と株式の相対的な魅力」の二つの視点から見ていきます。

そのうえで、「株式価値を計算するときの割引率」という視点を加えて、金利と株価のつながりを捉えていきたいと思います。

景気動向と政策金利の動き

景気が強いと、金利と株価はどう動くのか

まず、景気が良くなってきた場面を考えてみます。

企業の売上や利益が伸びれば、投資家は今後の業績にも期待します。株式を買う人が増え、株価は上がりやすくなります。

ここまでは、景気の強さが株価を押し上げる流れです。

ところが、景気が強くなりすぎると、物価上昇圧力が高まります。中央銀行は景気や物価の過熱を抑えるため、政策金利の引き上げを検討します。

政策金利が上がれば、企業の借入金利や住宅ローン金利なども上がりやすくなります。

企業は借入負担が増えるため、設備投資に慎重になります。個人も住宅ローンなどの負担が増えれば、消費を抑えるようになります。

その結果、景気や企業業績の伸びが鈍ると予想され、株価には下押し圧力がかかります。

つまり、好景気は企業業績を通じて株価にプラスに働く一方、その好景気を背景とした利上げは、将来の景気や企業業績を抑える方向に働きます。

株価は、「業績改善による押し上げ」と「金利上昇による引き下げ」の綱引きになるのです。

景気拡大の初期には、業績改善への期待が勝ち、金利と株価がともに上がることがあります。しかし、利上げが続き、景気を冷やす影響が強く意識されるようになると、株価は金利上昇を嫌って下がりやすくなります。

同じ金利上昇でも、景気循環のどの場面にいるかによって、株価の反応は変わります。

景気が弱いときは、反対の綱引きになる

では、景気が悪くなった場面ではどうでしょうか。

企業の売上や利益が伸びなくなれば、株価にはマイナスです。投資家が景気後退を予想して株式を売れば、株価は下がります。

一方、中央銀行は景気を支えるため、政策金利の引き下げを検討します。金利が下がれば、企業や個人はお金を借りやすくなります。

設備投資や消費を支え、やがて景気や企業業績を回復させる効果が期待されるため、利下げは株価にプラスです。

ここでも、「業績悪化による引き下げ」と「金利低下による押し上げ」が綱引きをします。景気悪化への不安が強い間は、利下げをしても株価が下がることがあります。

しかし、景気の底打ちや業績回復への期待が高まれば、金利低下が株価を押し上げやすくなります。

金利と株価を見るときに大切なのは、利上げ・利下げという結果だけを見るのではなく、なぜ金利が動いたのか、その金利変化がこれからの景気や企業業績にどう伝わるのかを考えることです。

債券と株式の相対的な魅力

金利から株価へ伝わるもう一つの経路が、債券と株式の間の資金移動です。

投資家にとって、債券と株式は運用の中心となる商品です。同じ資金を投資するなら、安全性の高い債券で一定の利回りを得るのか、価格変動のリスクを取って株式に投資するのかを比較します。

金利が上がると、債券から得られる利回りは高くなります。債券だけでも相応の収益を得られるのであれば、あえて株式のリスクを取らなくてもよいと考える投資家が増えます。

株式から債券へ資金が移れば、株価には下押し圧力がかかります。

反対に、金利が下がると債券の利回りも低下します。債券では十分な収益を得にくくなるため、より高い収益を求める資金が株式へ向かいやすくなります。

これが、金利低下が株価の追い風になるもう一つの理由です。

株式の魅力は、株式だけを見て決まるわけではありません。金利が変われば、比較対象である債券の魅力が変わり、その結果として株式への資金の流れも変わるのです。

配当割引モデル

ここまで見てきた金利と株価の関係は、「配当割引モデル」を使うと、理論的にも説明できます。

第19回「単利・複利と現在価値」では、債券価格を、将来受け取る利息と元本の現在価値の合計として考えました。株式にも、これと似た考え方があります。

投資家は、配当や将来売却するときの値上がり益を期待して株式を買います。配当割引モデルでは、将来受け取ると見込まれる配当を現在価値に直し、その合計を株式価値の土台と考えます。

そして、将来の配当を現在価値に直すときに使うのが「割引率」です。株式の割引率は、国債などの金利に、株式を保有するリスクに見合う上乗せ(プレミアム)を加えて考えます。

他の条件が変わらなければ、金利が上がると割引率も上がります。割引率が高くなれば、将来受け取る配当が同じでも、その現在価値は小さくなります。

これが、金利上昇が株価の下押し要因になる理論的な説明です。反対に、金利が下がって割引率も下がれば、将来の配当の現在価値は大きくなり、株価には上昇圧力がかかります。

とくに、現在の利益や配当よりも、遠い将来の成長が期待されている企業ほど、金利上昇の影響を受けやすくなります。将来受け取るお金ほど、割引率が上がったときに現在価値が大きく減るからです。

金利と株価を一つの流れで捉える

金利が上がると、企業や個人の借入負担が増え、景気や企業業績を抑える方向に働きます。債券の利回りが上がることで、株式から債券へ資金が移りやすくなります。

さらに、株式価値を計算するときの割引率が上がり、将来の配当の現在価値も小さくなります。

この三つの経路によって、金利上昇は株価の下押し要因となります。金利低下の場合は反対の経路が働き、株価を押し上げる要因になります。これが、金利と株価が基本的には反対方向に動きやすい理由です。

ただし、金利と株価の間には景気や企業業績が介在します。したがって、金利の方向だけで株価を機械的に判断することはできません。

好景気による業績改善と利上げによる下押しのどちらが強いのか、景気悪化と利下げによる下支えのどちらが強いのか。その綱引きを考えることが、金利と株価のつながりを読む基本になります。

次回は、金利と為替がどのようにつながっているのかを、今回と同じく一つの流れとして捉えながら説明します。

📌 30秒で振り返り

・好景気は株価にプラスだが、景気の過熱を抑える利上げは株価にマイナスとなる。また、景気悪化は株価にマイナスだが、景気を支える利下げは株価にプラスとなる。

・金利上昇は債券の魅力を高め、株式から債券への資金移動を促す。さらに、金利上昇で割引率が高まると、将来の配当の現在価値は小さくなる。

・金利と株価は、常に反対方向に動くわけではない。景気や企業業績を介した綱引きとして捉え、運用判断に生かすことが重要である。

💡 筆者メモ

市場では、金利が上がったから株価が下がったと説明されることがあります。しかし大切なのは、その金利上昇が景気や業績の強さを映したものなのか、それともインフレ懸念や金融引き締めへの警戒を映したものなのかを見分けることです。

私の経験では、債券の運用担当者の中には「債券の動きは景気動向に忠実であり、株式市場は債券市場に追随する」と考える人が多いように感じます。

市場分析に浸り、自信を持ちすぎると、判断を誤る危険があります。頭でっかちにならず、値動きの理由を一つに決めつけずに背景をたどる姿勢こそが、相場観を養います。

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本記事は一般的な情報提供および教育を目的として作成したものであり、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。詳細は免責事項をご覧ください。

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