有価証券運用を理解するための第一歩
*この連載では、信用金庫の有価証券運用を「なぜそう考えるのか」という視点から、実務経験をもとに解説していきます。
はじめに
私は証券会社で33年、そして信用金庫で6年の間、有価証券運用に携わってきました。
信用金庫へ移ってから私が学んだことは、それまで抱いていた「運用」の考え方を大きく変えるものでした。
信用金庫の有価証券運用は、利益を最大化することが目的ではない。
地域のお客様からお預かりした大切な預金を守り、信用金庫の経営を長く安定させることである。
私は、ここ6年間で歴史的な金利上昇局面を経験しました。
その中で強く実感したのは、当金庫にとって優れた運用とは派手な成果を上げることではなく、「何も起こらないこと」を実現することであるということです。
大きな損失を出さず、経営を揺るがさず、毎年着実に収益を積み重ねる。
その積み重ねが信用金庫の経営を支え、ひいては地域社会への貢献につながると信じています。
この連載記事では、運用担当になったばかりの方、営業や融資部門から異動してきた管理職の方、地域金融機関にとっての運用の考え方を学び直したい方に向けて、
理論だけではなく、「なぜそう考えるのか」という、現場で役に立つ判断の考え方をお伝えしたいと思います。
そして、私自身も読者の皆様とともに考え続ける姿勢を忘れず、この連載を書き進めていきたいと思います。
信用金庫とはどんな金融機関か
なぜ多くの信用金庫は、高い運用益を狙う投資ファンドのように積極的に運用利益を追わないのでしょうか。(なかには、そうでない信用金庫もあります。)
「もっと高い利回りの商品を買えば利益は増えるのに、なぜ信用金庫はそうしないのだろう。」
運用担当になったばかりの方なら、一度はそう疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
信用金庫の使命
多くの信用金庫は、それぞれ経営理念を掲げています。その一例として、業界大手である城南信用金庫では次の三つを経営理念として掲げています。
城南信用金庫の3つの理念
・中小企業の健全な育成発展
・豊かな国民生活の実現
・地域社会繁栄への奉仕
(詳細は城南信用金庫ホームページをご参照ください)
なぜ信用金庫は利益だけを追わないのか
信用金庫は、地域で集めたお金を地域へ循環させることで、地域経済を支える金融機関です。
預金をお預かりし、その資金を地域の企業や住民へ融資することを本来の使命としています。

城南信用金庫の経営理念の中でも、私は、以下の言葉に信用金庫の本質が凝縮されていると思います。
・お客様のお役に立つべく、「貸すも親切」「貸さぬも親切」の精神をもって地域の中小企業の育成発展に貢献します。
銀行との違い
株式会社である銀行では株主の利益が最優先され、利益の追求が主目的となります。
事業地区の制限はなく、地域外でも事業を展開しており、大企業や外国企業との取引も行っています。
証券会社で働いているときには、「どう利益を上げるか」が常に問われていました。
しかし信用金庫では、「地域のお客様からお預かりした大切な預金をどう守るか」が運用の出発点でした。
同じ有価証券運用でありながら、目的がまったく違うことに私は驚きました。
信用金庫の有価証券運用を理解するためには、まず信用金庫そのものを理解しなければなりません。
信用金庫は、どのように利益を上げて経営を成り立たせているのでしょうか。
次回は、信用金庫の収益構造について見ていきます。
📌 30秒で振り返り
・信用金庫は利益最大化ではなく地域への貢献を目的とする金融機関である。
・有価証券運用も、その使命を支えるために行われる。
・運用を理解するには、まず信用金庫そのものを理解することが重要である。
💡 筆者メモ
私は証券会社で33年間、市場で利益を追う立場にいました。
しかし信用金庫へ移り、「利益を追うこと」より「地域のお客様の預金を守ること」が信用金庫の運用の原点であると実感しました。
この価値観の違いは、その後の私の運用に大きな影響を与えました。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供および教育を目的として作成したものであり、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。詳細は免責事項をご覧ください。
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