融資と有価証券運用の仕組み
*この連載では、信用金庫の有価証券運用を「なぜそう考えるのか」という視点から、実務経験をもとに解説していきます。
信用金庫は営利企業とは少し違う考え方で運営されている金融機関です。
皆さんは、薪を背負って本を読んでいる二宮尊徳翁の銅像をご覧になったことがありますか。私の通っていた小学校にはありました。
尊徳翁は、信用金庫の原型である相互扶助の仕組みをつくった人物と言われています。
尊徳翁の残した言葉に、「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」という名言があります。
どれだけ素晴らしい理念を持っていたとしても、継続できなければ、結果として世の中の発展のために価値を提供することはできません。
信用金庫は「利益を追求しない金融機関」と思われがちです。しかし、利益がなければ地域を支えることもできません。
では、その利益はどこから生まれているのでしょうか。
融資による利ざや収益
信用金庫の収益の中心は、預金と融資の利ざやです。
預金者から預かったお金を、地域の中小企業や個人に、預金より高い金利で貸し出すことで利ざやを得ます。
「貸出金利 − 預金金利 − 経費」が本来業務による利益の中心です。
信用金庫と地方銀行の収益構造を比較すると、足元の金利上昇によってどちらも貸出金利が上昇しており、融資収益は改善しています。
ただし、地銀では、有価証券運用や手数料収入など、融資以外の収益の割合が比較的大きい傾向があります。
余裕資金運用による収益
地域で貸し出しきれなかった預金は、信用金庫の上部組織である信金中央金庫への預け入れや、国債やその他の市場性商品の運用に回されます。
信金中央金庫は、信用金庫から預けられた資金を用いて国内外で多様な運用を行い、その運用成果の一部を各信用金庫へ利息収入として戻しています。
さらに、多くの信用金庫では国債や地方債などを中心とした債券運用も行っています。
この数年の金利上昇によって、金利リスク管理が収益と健全性の両面で重要になっています。
金利が上昇すると、保有している債券の価格は下落します。利益を確保するだけでなく、こうした価格変動を管理することも運用担当者の重要な仕事です。
ここから得られる利息・配当・売買益などが、いわゆる有価証券運用収益といわれるものです。

協同組織としての特徴と利益水準
信用金庫は協同組織金融機関であり、会員や地域の利用者の相互扶助を目的としています。
このため、「利益最大化」ではなく、地域への金融サービスを継続・強化するために必要な「適正な利益を確保する」という考え方が前提になります。
「信用金庫は利益を目的にしていない」のではなく、「地域を支え続けるために必要な利益を確保している」。
利益は、銀行のように配当として株主へ厚く還元するのではなく、適正な配当金支払い後に、自己資本を厚くし将来も地域金融を続けるために活用されます。
それら収益は、地域イベントへの協賛などの非金銭的なサポートも含めた地域貢献投資に回されることも多いです。
しかし現在、多くの信用金庫では融資だけでは十分な利益を確保しにくくなっています。なぜそのような時代になったのでしょうか。
次回は、その背景を一緒に考えていきます。
📌 30秒で振り返り
・信用金庫の収益の中心は、預金と融資の利ざやである。
・融資に回らなかった預金は、信金中央金庫への預け入れや、有価証券の運用に回される。
・相互扶助を目的としている信用金庫では、「適正な利益を確保する」という考え方が前提になる。
💡 筆者メモ
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉が好きです。
理念だけでは組織は続きません。一方で利益だけを追えば地域から信頼を失います。
信用金庫は、この二つのバランスを大切にしてきた組織なのだと思います。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供および教育を目的として作成したものであり、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。詳細は免責事項をご覧ください。
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