人口減少時代の地域金融機関が抱える課題
*信用金庫は地元と共にあります。そのなかで、信用金庫が誕生してから日本の状況は大きく変わりました。各地の苦境はそのまま信用金庫の苦境でもあります。
信用金庫の収益構造は、「預金で集めたお金を貸し出して、その金利差で稼ぐ」といったモデルを基本としています。
しかし、近年の信用金庫の経営破綻事例を振り返ると、融資ではなく有価証券運用で大きな損失を抱えたケースも見られます。
融資を本業とする信用金庫が、なぜ本業以外の有価証券運用でそこまでリスクを取る必要があったのでしょうか。
低位の貸出金利設定
信用金庫が、融資業務だけでは利益が出にくくなっている理由として、まずは、長期にわたる低金利で、貸出金利そのものが低いことがあげられます。
利ざやがどのくらい縮小したかをイメージできるよう述べてみます。
「昔は、預金金利が2%で貸出金利が5%、利ざやは3%」くらいであったのが、「今では、預金金利は0.2%で貸出金利が1.5%、利ざやは1.3%」くらいになっている、ということです。
また、地域・協同組織ゆえに、会員や地域への配慮から、高金利でがっつり稼ぐような金利設定はできない面もあります。
さらに、信用金庫の営業エリアと取引は地元地域に限定され、取引の中心は中小企業と個人です。営業地域外の成長分野へは基本的に出ていけません。
つまり、狭いマーケットで、無理な金利設定はできないというのが、信用金庫が置かれている状況なのです。
特に、これまでの低金利下で融資に占める固定金利貸出の比率が高い信用金庫では、預金金利の上昇から利ザヤがさらに縮まっています。
日本銀行による政策金利引き上げからくる預金金利の上昇に対して、固定貸出の金利を上げることは容易ではないからです。
地域経済の縮小と信用コスト増加
信用金庫の地盤の中には、人口減少・高齢化が進む地域が少なくありません。
人口減少でも高齢者の預金は残ります。地元においては、資金の借り手だけが減る状況です。
地元企業の売上や投資意欲が伸びにくい状況で資金需要は減っており、預金はあるが貸し出す先がない状態の信用金庫が増えています。
地方経済は疲弊しており、信用コスト(倒産リスク)を意識せざるを得ない状況です。無理に融資残高だけ増やすと将来の貸倒リスクが膨らみます。
コロナ後のゼロゼロ融資返済本格化などで、融資量の先行きも不透明です。結果として、融資業務だけでは利益を確保しにくくなっています。
コストと規制対応負担が重い
信用金庫は従来からの対面営業を基本としており、店舗網や人件費など、固定費が重くかかります。
さらに、マネーロンダリングへの対策やシステム投資、金融庁・監査対応などの規制コストは、規模が小さくても同じだけかかります。
収益が薄い一方でコストは下がりにくく、融資利ざやだけではコストをカバーして十分な利益を出すことは難しいのが現状です。
それでも、信用金庫は自分たちの利益だけを見て取引先を選べません。景気が悪くなった企業にも伴走することが期待されています。
リスク分散の観点
収益源を融資に集中させると、景気悪化や特定業種不振で貸倒れが増えたときに、一気に収益と自己資本が傷みます。
自己資本比率の維持や将来に備えて内部留保を厚くするためにも、有価証券運用による利息・配当収入を組み合わせて必要収益を確保する必要があります。
このように、収益源を分散して融資収益だけに頼らないことは、景気変動にも対応しやすい収益構造をつくることにつながります。

信用金庫は融資だけで十分な利益を確保しにくい時代になっています。
地元企業に融資できる体力をキープするためにも、収益源の多様化が喫緊の課題です。
そのため、貸し出せなかった資金をどのように運用するかという余裕資金運用が、経営上ますます重要になっています。
信用金庫にとっての余裕資金運用は、「本業ではない仕事」から、「本業を支える仕事」になりました。
では、その余裕資金運用として、信用金庫では具体的に何を行っているのでしょうか。
次回は、余裕資金運用の現状について見ていきます。
📌 30秒で振り返り
・信用金庫の営業地盤は人口減少・高齢化が進み、資金需要は減っている。
・信用金庫の貸出金利は、構造的に高くすることが難しい。
・したがって、余裕資金運用は経営上ますます重要になっている。
💡 筆者メモ
私は証券会社時代に、全国の信用金庫へ出張訪問していました。10年以上前です。
「日本の高度経済成長を支えた」という過去に繁栄した街の商店街も、半数以上の店舗がシャッターを下ろしている光景に時代の流れを感じました。
全国どこへ行っても、そこで生活している人がいます。地域の人々の暮らしを支えるという信用金庫の役割は、数字だけでは測れないものだと感じました。
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本記事は一般的な情報提供および教育を目的として作成したものであり、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。投資に関する最終判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。詳細は免責事項をご覧ください。
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